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a naughty anpanman
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BGM♪ Virtual insanity / Jamiroquai


好きこそものの上手なれ。

昔から「機械イジり」が好きであった。小学校からの帰りしなにゴミ捨て場から壊れた時計や炊飯器、ラジカセなどを
拾ってきては、くまなく分解して庭先を散らかしてみたり。はたまた、愛犬住まう犬小屋に、油まみれた
それらの部品をコレクションしてみたり。ばらした部品を組み合わせて、まったく意味不明な機械らしきもの
を作ってみたり。そして、それを愛犬住まう犬小屋にコレクションしてみたり。

母親泣かせの分解・蒐集癖を遺憾無く発揮していた私だが、それが幸いして、自慢ではないが機械イジり
にはそこそこの自信がついていった。

中学生のころには、近所でも「機械が得意な少年」ということで少々名が知れ、やれビデオデッキを買ってきたが
繋ぎ方がわからん・・・というお宅に呼ばれて繋いだり、やれ扇風機が回らなくなった・・・というお宅に呼ばれて
分解修理してみせたり。挙句の果てには近所のオバサマたちから、当時流行っていた「アッシー君」や「貢ぐ君」に
ちなんで「繋ぐ君」(電気コード類を自在に繋ぎ操るから)と呼ばれたりして、何かと重宝がられていた。

そんなこんなで今に至り、昨今でもよく機械に関して頼られることが多い。今どき多いのは、やはりパソコン
のトラブルである。一般家庭に於いて、機械が苦手な人にとって一番厄介なのがパソコンのトラブルであろう。
ブラウン管テレビや洗濯機なら、必殺の空手チョップや回し蹴りをお見舞いしてやれば、それでケロリと直って
しまったりするカワイゲがあるのだが、繊細な電子部品の集合体たるパソコンともなると、そんなものお見舞い
した日には真っ二つになってしまう。

これは人間にも言える。頑丈単純なボブ・サップが珍しく風邪をひいたとする。そんなボブを極寒の日本海
にでも放り込めば、荒治療効果覿面に本懐し、そのままウラジオストクあたりまで泳いでいってしまうかもしれない。
はたまた、繊細虚弱な太宰治が毎度の様に風邪をひき、炬燵で猫の様に丸くなっていたとする。そんな
太宰を引きずり出して玉川上水にでも放り込めば、荒治療効果応報に鬱ぎこみ、そのままぶくぶくと
沈んで逝ってしまうかもしれない。

実際、遅い動きに憤慨して、ショック療法の正拳突きを喰らわせたら、
パソコンがウンともスンとも言わなくなって逝ってしまった可哀相な人を、私は知っている。

仕事の片手間で、そんなトラブルを抱えたパソコンを直したりすることが多いのだが、先日、友人のパソコン
を直した際にこんなことがあった。

その友人A(男・独身・30代)は、パソコン・・・というか、機械全般に於いてその仕組みや管理に疎く、使い放し
で「メンテナンス放置状態」のノートパソコンの調子が悪いと泣きついてきた。見てみれば、そのパソコンの
動作は、足かせを嵌めた亀の様に遅く、百日紅の木の上で泥酔した猿の様に不安定であった。

一通りのメンテナンスをしても動作が重たいので、インターネットなどから感染するウイルスやスパイウェアを
疑ってみると・・・それらを監視するセキュリティソフトが、とうの昔に期限切れになって停止しており、
何の用も成していなかった。しかも、何故かそんな意味のないセキュリティソフトが三つも入っていた。

呆れ果てて本人に、なんでこんな状態なのかと問いただすも、意味がよくわからないという。
まぁ・・・よくわからないから、私の助け舟を求めたのであろうが。

さっそく新しいセキュリティソフトを導入し、感染を検索してみると・・・でるわでるわ。
パソコンの動作に悪影響を及ぼすスパイウェアやウイルスたちが、未曾有の大漁であった。

Aのパソコンの状態を四畳半の部屋に例えると、ゴミや洗濯物、古雑誌や空瓶、男臭い万年床に煎餅布団、
こぼれてそのままのカップラーメン・・・などなどが散らかり放題(いらないデータが多い)な上に、
ゴキブリ(ウイルス)だらけである。ゴキブリホイホイ(セキュリティソフト)は三つも置いてあるのだが、
その中のベトベトの部分はすでに隙間なくゴキブリで黒々と埋まって用を成さなくなっており、ただの
「ゴキブリのいっぱい入った箱」と化している。そんな感じだ。

私くらい少しパソコンの分かる者が見れば、Aのそれは、いささか見るに耐えない状態のシロモノであった。

四苦八苦して散らかった部屋を片付け、邪悪な大量のゴキブリ達を撃退して、どうにか速くて安定した動作で
使えるようにしてやると、Aは驚くほど狂喜し、さっそく快適になったパソコンの動作を確認し始めた。

のだが・・・

あろうことか、インターネットで海外発信過激的猥褻動画項をつらつらと紐解いて動作を確かめているではないか。
しかも、パソコンに滅法疎いくせに、猥褻項に限っての操り方と詳しさと無駄のない動きの神がかり的な
ことといったら、まるで水を得た魚。筆を得た弘法。金棒を得た鬼。顔を得たアンパンマン。

先ほどまで、懸命にパソコンをメンテナンスする私の脇で胡坐をかき、興味無さ気に、のんべんだらりと魂を天井あたり
まで抜いてポケ~っとしていたこの男が、今や目に一点の曇りもなく、心なしか知的な眼光を点らせて、
マウスさばきも鮮やかにパソコンを操作している。その姿だけ見れば東大卒のエリートが、ノートパソコンで
仕事をテキパキとこなしている様な趣がある。画面に映っているのが、淫靡極まりない桃色風景であるのが
非常に残念だが。

男性諸君なら誰でも身に覚えがあるであろう。初めてのインターネットで桃色な秘め事を成そうとし、
そこかしこに張り巡らされた罠に痛い目に遭い、買ったばかりのパソコンが毒牙に曝され調子が悪くなる。
そこで大概二者に分かれるものだ。痛い目に懲りて二度とインターネットの桃色世界に手を出さなくなる者。
または、恐れよりも本能が勝り、試行錯誤で桃色世界の卑劣な罠と戦い、知らぬ間にパソコンにも強くなっている者。
もちろん私は後者だが、Aの場合はどちらにも属さない稀有な存在だ。彼は、本能の赴くまま、強引且つ大胆に、
機械音痴もなんのその、と突き進んだ結果、桃色世界の強者と成り得た。しかし、パソコンには全然強くなれなかった。
そしてなろうともしなかった。当然の結果、パソコンはゴキブリだらけの廃れ四畳半と相なった訳である。

大切な相棒たるパソコンに対する知識を身につけ、もう二度と粗末に扱うべからずと釘を刺したのだが、
人には得手不得手があるのは否めない。
ならばせめて、またしても懲りずにゴキブリを繁殖させてしまった四畳半から、間違ってもカードで
アマゾン川に流れる品々のお買い物などしない様にと祈るだけである。

急に冷え込んで、見事に風邪っぴきな今日この頃である。

model : yuya tsuruta
by hideet-seesaw | 2011-09-25 22:21 | photograph


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