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eye can't believe.
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BGM♪ Swallowtail Butterfly / Yen town band


先日、免許証の更新をするために府中市にある運転免許試験場にノコノコと赴いた。

私は左右の視力が極端に違う所謂「がちゃ目」で、「普通免許」までなら両目合せて0.7の視力検査を
なんとか裸眼でクリアできるのだが、幸か不幸か、トラックやバスを運転できる「大型免許」も持っているため、
「奥行き検査」なるものをやらなくてはならないのだが、これが滅法厄介なのである。

検査機械の小窓を覗くと、三本の黒い棒が縦に並んでおり、真ん中の棒が前後に移動している。
その三本が横並びに揃った時に検査官に合図を送るという至って単純なものなのだが、少々乱視の入った
「がちゃ目」の私には、裸眼ではこれが全然わからないのだ。以前、初めてこの検査を受けた際、
全然分からないので、めくらめっぽう合図を送ったら敢えなく不合格になり、数日後コンタクトをあつらえて
再度府中の試験場まで赴いたという苦い経験もある。従って、この奥行き検査にかぎり
コンタクトレンズを装着する。そして、免許証には「眼鏡等使用※大型に限る」などという、ややこしい
文句が付いてしまうのだ。

普段の生活に支障のない視力で、大型の車両もめったに乗らない為、コンタクトレンズの出番は、殊、
この免許の更新のときのみとなる。

普段生活に支障ない視力とはいっても、右目は乱視の近視。いつも視力の良い左目でカバーしている状態だ。
免許更新のために2年ぶりくらいに入れたコンタクトレンズのおかげで、物が良く見える。これは面白い。
壁の時計や試験場に隣接する武蔵野公園の木々の梢、その上空を飛ぶ調布飛行場のセスナ機、
遠くを颯爽と歩くキレイなお姉さま・・・などなど、よく見える。見えるものの立体感が普段とまったく違うのだ。
千里眼を手に入れた猿の如く、うきききぃと心の中でハシャぎまくってしまった。

これが災いした。

普段、安全運転を心がけているつもりだが、道路交通法に則り唯々諾々と、面従腹背の赴きで
そのまま2時間の強制違反者講習を受ける。参加したことのある方ならご存知かもしれないが、これが大層
退屈なのである。しかし、居眠りや携帯イジりをしようものなら、即刻退場&免許剥奪の憂き目に遭うという、
強力な権力を持った講習なのだ。まあ・・・昨年21km/hのスピード違反をしたのは紛れもない事実であるし、
交通安全の志を初心に帰って見つめなおすのも、この際ヤブサカではない。

その日講習を受け持った、おそらく警察官のOBと思しき初老の教官は、どことなく中尾彬に似た御仁で、
ユーモラスに面白く講習を進めていらしたのだが、私は右目に入れた千里眼のコンタクトが新鮮でならず、
初心奪還の志空しく、普段良く見える左目をわざと閉じて、新鮮な見え味の右目で外を見たり壁の時計を
見たり、前列のキレイなお姉さまを見たりして暫く遊んでいた。

そこに轟いた中尾彬教官の一喝。「おまえっ!さっきからウィンクしながらキョロキョロとなにしてるッ!!」

中尾彬教官のズ太い指先と、講習室の好奇な目線が一斉に私に向けられた。
厳正厳粛たる天下の桜田門主催の講習中に、私は「ウィンクしながらキョロキョロ」していたのだ。
威喝されるのも無理からぬ話。まさか「前列のあのキレイなお姉さまを、千里眼コンタクトで見てました!てへ。」
とも言えず、「いや・・・あの・・・目にゴミが・・・」などと、至極一般的且つ嘘バレバレな裏返り声の言い訳を
ゴニョゴニョと答えた。

「・・・おまえ。今後そんな挙動をしたら、退場にすっぞ。」と、先ほどまでの恵比寿顔を吹き飛ばして、鬼の
形相をした中尾彬教官から、妙にドスの効いたイエローカードを頂戴してしまった。
その後、講習室には「ぷぷ・・・くくく・・・ぷふっ」という、数人の笑いをこらえた音がしばらく続いていた。
通路を挟んだ隣の作業着姿の中年男性に至っては、私の顔を凝視しながら「ぶふふふふ」と、
露骨に笑っていた。

顔から火が出る・・・とはまさにこのこと。その後続いていた1時間ほどの講習のことは、殆ど憶えていない。
おそらく私は、茫然自失のハニワ顔で、虚空に魂を浮かべるという自己防衛手段で時間をしのいでいたと
思われる。

「高水。お前、バレないようにウォークマン聴いてるつもりだろうがな、教壇からは思いのほか見えてる
もんだぞ。」と、高校時代に数学の教師から忠告されたことがある。そんなことをほのかに思い出した。

では、何ゆえ普段からコンタクトをしないのか?と問われれば、それは面倒くさいからの一言に尽きる。
左右の視力の差がありすぎて、眼鏡は作りにくいと眼科では言われた。

例によって犯罪者風のウツロな顔写真の更新免許を受け取って、バイクに乗っての帰り道。
多磨霊園の桜の木から聞えてくる季節はずれのツクツクボウシの鳴き声が、傷心を撫でるように
そっと慰めた。そんな私の昔の夢は、勇猛果敢な白バイ隊員になることであった。

model : chie k
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by hideet-seesaw | 2011-10-21 17:37 | photograph