「ほっ」と。キャンペーン
real shimu-ken
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BGM♪ Ain't that just the way / Lutricia McNeal


いつも、ある一品だけを買いにスーパーに入っても、店内を歩くと様々な商品が目に入り、
そして「これも買っておくか・・・」とあれもこれもと物色しだし、手だけでは持ちきれなくなって
買い物カゴが欲しくなる。

スーパーの買い物カゴは大概、店の入り口とレジ付近だけにしかなく、結局もう一度入り口まで戻るハメになる。
両手に抱えきれない程の商品を持って入り口付近に戻るとき、万引きに間違われないように
必要以上に堂々と歩いてしまうのは、私だけであろうか。チンパンジーのオリバー君よりも学習能力が
著しく足りない私は、そんなことを毎度スーパーへ赴く度に繰り返している。

先日、お腹に優しいピルクルだけを買いに、実家から程近いスーパーに行ったときのこと。

結局たくさんの品を買ってレジ袋へ詰める作業台?のところへ行くと、隣で腰の曲がった80代と思しき
老婆が、緩慢な動作で一所懸命袋詰めをしていた。すると、「ぼとぼとと」と音がして、おばあさんのレジ袋
から、鶏の唐揚げがたくさん落ちてしまっていた。袋が破けてしまったようだった。おばあさんは気づかない。

「あの・・・唐揚げ落っこっちゃいましたよ・・・。」と言いながら拾い集めてあげると、
「あぁあぁあぁあぁぁ・・・・・・・」と、まるで孫にフラれた時のような悲しい声をあげ、志村ケン扮するおばあさん
バリの西多摩弁で、悲しみを訴え始めた。

「あんだかよぉ・・・。袋が破けちまったんだぁなぁ・・・・。はぁ~~・・・・。もおダメだぁ、こりゃぁ・・・。はぁ・・・。」
魂の抜けてしまいそうな切ない溜息を吐いて想定外に落胆しだしたので、おばあさんから本当に魂が
抜けてしまったらシャレにならんと思い、「慰めの偽善者作戦A~対ご老体用~」を決行することにした。
より親近感を抱かせるため、こちらも使い慣れたバリバリの西多摩弁を用いる。
こんな場合、タメグチも宜しかろう。

「おばあちゃん、ちょっと落ちたぐらいダイジョブだぁよぉ!家帰って洗ゃあ食えんべえ?もってぇねぇよぉ!」

「落とした食い物3秒ルール」なんてクソ食らえなイジ汚い私の尺度でそんなこと言ってみたが、
それでもおばあさんの落胆はさらに急降下すること止まらない。というか、私の言葉を聞いていない。
「あんだかよぉ・・・・。はぁぁぁ・・・。あんだかなぁ・・・。」と繰り返して私の拾う唐揚げを見つめている。
・・・よほどこの唐揚げを楽しみにしていたのだろう。ヤバい・・・。このままではおばあさんが
悲しみの心臓発作を起こしてしまいかねない。

その悲しみ様と言ったら、靴磨きで手に入れたなけなし銅貨で買ったチョコトッピングアイスクリーム三段重ねを、
一口も食べずに落としてしまい、悲しみに暮れて路頭に呆然と佇む哀れな少女のようだった。
あまりに悲しそうなので、新しい唐揚げを買ってあげようかとも思ったが、それもなんだかオカシな話なので、
とりあえず必死で「平気だぁよぉ!!洗ゃあダイジョブだぁって!!もったいねぇってばよぉ!!ホラホラ!
旨そうじゃんかぁ!!」と励ましていると、ふと、おばあさんがカラリと笑顔になり、こう言った。

「おれぁ落ちたもんは食えねぇけんど・・・ほんだらよぉ、これ、お兄ちゃんにくれらぁ。持って帰んな。」

何を隠そう三度のメシより・・・もとい、三度のメシが唐揚げでもノープロブレムなくらいの唐揚げ好きな
私である。(※参照 "like a crazy beast"
実は唐揚げを拾いながら「いい匂いだなぁ・・・・たまらんぜ。」などと思っていたのだ。それが伝わってしまった
のかもしれない。一瞬「え!?・・・そ、それなら・・・」と頂いてしまおうかと思ったが、それもまたオカシな話である。
落とした唐揚げを一瞬たりとも貰おうと思った私もツワモノだが、落として自分では食べられないと言った
ソレを笑顔であげようとするおばあさんも、なかなかの手練れである。そして丁重に断った。
なぜなら・・・その様子を先ほどから買い物客の主婦たちが数名、物珍しげにジロジロと見ていたからだ。
地元なので、知った顔もいたかも知れない。主婦になって買い物をしている同級生だってたくさんいる界隈だ。

「あれ・・・ヒデトじゃん。あ・・・拾った唐揚げ貰ってやんの!やっば~い。そういえば、小学生のとき
自慢げにドッグフードや蟻んこ食って見せてたっけ・・・。いい歳コイて終わってんな。あいつ。」

「あらヤダ・・・高水さんとこの息子さん、落ちた汚い唐揚げを嬉しそうに貰ってったわ!フケツだわ!
黴菌だわ!あきる野のスペースデブリだわ!!高水さんちって、どんな食生活なのかしらっ!」

なんて家族にまで糾弾は及び、母は泣き、父は呆れ、姉は寝込み、犬は喜び庭駆け回り、猫はコタツで丸くなり、
近所から村八分の憂き目に遭って、もうイヤんなっちゃって、家出して、盗んだバイクで走り出して、グレて、
腐ったミカンになって、流れ流れて、場末のバーで顔色の悪いバーテンダーでもして、「目つきがいい」なんて
どこぞの親分さんに見込まれて、杯を貰って、裏街道出世まっしぐらして、ゴールドエンブレムの
メルセデス・ベンツ600SELに縦縞スーツにサングラスでパンチパーマのイケイケ兄貴になって、
調子に乗って、オラオラして、敵対する組の鉄砲玉に撃たれて血が出て「なんじゃこりゃ~!!」って
叫んで逝って、唐揚げのせいで哀れ東京湾の藻屑となってしまってはたまらない。だから貰わなかった。

家に帰ってボソボソと冷たいメシを食べながら、やっぱり唐揚げ貰っておけばよかったかな・・・と、
ちょっと後悔したあとに、ピルクルを買い忘れていたことに気が付いた。


model : aki
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by hideet-seesaw | 2012-03-07 09:20 | photograph


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