paranoid person
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BGM♪ Take five / Dave Brubeck


先日、車に乗って裏道をトロトロと走っていたら、前方から小学三年生くらいと思しき少年が、
手に持ったジュース缶を道路脇の柵にカンカンと当てながら、ポケ~っとてくてく歩いて来た。

その少年の脇を何気なくやり過ごすと、2、30mほど離れた後方に、明らかにその少年の後をこっそりと、物陰に
身を隠しつつ、不器用につけてくる40歳前後の女性がいることに気づいた。手にランドセルと子供用の傘を持っていたのと、
人目を憚らず変な尾行をしているその姿から、その少年の母親であろうことは一目瞭然であったのだが、
少年を狙いすましたその目には、「ここで遭ったが百年目・・・」というような、気迫のこもった鋭い眼光が点っていた。

以下、想像力に任せた私の勝手な妄想だが、概ね事実もこんなところであろう。

息子サトル(小学3年生)。何かに気を奪われると周りが見えなくなり、ランドセルや傘、時には
散歩中の飼い犬「コロ」や、一緒に遊んでいた妹のユカ(小学一年生)をどこかに放ったらかして忘れてしまい、
そのまま帰宅する。母親アキコ(39歳)は、そんなサトルを毎回こっ酷く叱る。兄に置き去りにされて、
公園で泣きながら途方に暮れるユカを迎えに行ったことも、思いがけず放たれて自由を謳歌し、
路肩の生ゴミを漁りつつ逃げるコロを追いかけまわしたことも、一度や二度ではない。
そんなアキコの苦労にも拘らず、何度言い聞かせても、サトルの奔放癖は直らない。
業を煮やしたアキコは、夫のフミオ(43歳)に事の顛末を話すも、「子供なんてそんなもんだ。」と、
ビール呑みつつ片肘ついて横になり、観ているプロ野球ニュースから目も離さずに一笑に付された。
おまけに「ブッ」っと屁までこかれた。
思えばこのフミオも、電車に傘を忘れたり、飲み屋にカバンを忘れたり、コロの散歩中にふらりと立ち寄った
パチンコ屋で大当たりして、意気揚々と景品抱えて帰ってくるも、コロをパチンコ屋の軒先に縛り付けたまま
忘れてきたりなど日常茶飯事であった。挙句の果てには、先日なにかの書類を記入中に「配偶者生年月日」の欄があり、
それをしばらく眺めたあとに「・・・お前の誕生日、いつだっけ?」とポツリと訊いてきた。
蛙の子は蛙。この父親にしてこの子あり。と、妙に納得し、そして呆れた。誕生日も忘れてしまったようなフミオなど、
ビニール傘とイオンの1000円均一セールで買ったカバンでも持たせておけばそれでよいが、まだ小学生
である息子の将来を考えると、不安は募るばかりである。そんな或る日、「探偵物語」の再放送を見ていて
閃いた。下校途中のサトルを松田優作さながらに尾行して、モノを置き去る現場を押さえてやろう・・・と。
サトルは校門を出て近くの公園に寄ると、背負っていたランドセルと持っていた傘をベンチに置いて、ブランコに
座りぶらぶらやっていたのだが、何を思ったか、そこにノロノロと通りかかった廃品回収のトラックをフラフラと
追って、公園をあとにした。案の定、ランドセルと傘はベンチに置いたまま。それを抱えてさらにサトルのあとを
つけるアキコ・・・。

紫陽花の咲き乱れる小道に曲がって消えゆく少年と、その後をランドセルと傘を抱えて、不自然な尾行術でつけて消えてゆく
母親らしき女性の背中をバックミラー越しに眺めつつ、「ガンバレ!アキコ!」と、そんな妄想をしてみた。

photo: yokohama 2008
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by hideet-seesaw | 2011-06-16 22:20 | photograph


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