lovable police
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BGM♪ Energy flow / Ryuichi Sakamoto


→smile delivery

先日、iPhoneを拾った。
私も去年からiPhoneを使っており、その便利さと楽しさの底なき沼にどっぷりと浸かってしまっている身としては、
持ち主はさぞや「ない!ナイーーー!!俺のiPhone!!ああ”あ”あ”ーーーッ!!俺のiPhone・・・どこだよう・・・。」
と右往左往し、一心不乱に捜していることだろう・・・・と、哀れな姿を勝手に思い同情し、さっそく届けることにした。

手近にあった交番にゆくと、お巡りさんの代わりに60歳代と思しきオバサマが二人、
一見警察官のような制服を着て、拾得物の受付をしていた。

警察官OBから構成される、非常勤の交通相談員だそうだ。ナルホド・・・。見てくれは私の母と変わらないくらいの
オバサマだが、武道で鍛え上げた声には溌剌と張りがあり、動作は颯爽としていて隙がない。
携帯電話を拾ったと申し出ると、「ハイッ!ご苦労様です!」と、よく通る声で返答し、
キリリと引き締まった笑顔で敬礼をしてくれた。

うむむ・・・かっこいいオバサマたちだと思った。のだが・・・拾ったiPhoneを渡すと、さぞや
百戦錬磨の婦人警官であっただろうと思わせる、威厳と貫禄をもったその二人の表情に、一瞬動揺が見てとれた。

私はその彼女たちの動揺を見逃さなかったのだが、じきにそのワケがわかった。

「・・・このiPhoneというのは、パソコン・・・ですか?電子・・・手帳?」

一人のオバサマがiPhoneを手にして、まじまじと見つめながらそう訊いてきた。
携帯電話ですよと答えると、交番のパソコンに拾得物情報を打ち込み始めたもう一人のオバサマとなにやら
ボソボソと相談し始めた。

「このカタチ・・・これはパソコンのたぐいになるんじゃないかしら?」
「そうねぇ・・・でもコレで電話できるんじゃ、やっぱり携帯電話じゃないかしら・・・?」
「メーカーは・・・リンゴのマークがあるからAppleね!」
「あら?アナタよくわかるわね。」「息子のパソコンがこれなのよぉ~」

などと聞えてくる。「あのう・・・本体自体はApple社のものですけど、携帯電話としてはSoftbankのものですよ。」
などと私が余計に言ってしまったら、ふたりともキョトンとした顔をして、またボソボソと話し始めた。

「じゃあメーカー名打ち込むところに、なんて入れたらいいのかしら・・・?」
「本体はAppleでしょ?じゃあAppleでいいんじゃない?」「でも携帯会社はSoftbankらしいわよ?」
「じゃあとりあえずApple・・・と・・・あらヤダ!エラーになるわよ?」
「そこは全角で入れるんじゃなかったかしら?」「全角ってドレよ?」

結構困惑し始めた様子だった。パソコン操作にも全然慣れた感じではなかった。
ふたりは助けを呼ぼうと、交番内にいた若い巡査に目配せするも、
その巡査は受話器片手に書類を操り、なにやら忙しそうで助けてくれなかったのだ。

その後、散々ふたりしてあーでもないこーでもないとボソボソ話しながら、恐ろしく遅いキーボード操作で
拾得物情報を30分ほどかけて入れていった。私が途中、ふたりがiPhoneの電源の入れ方がわからないというので
助け舟してあげたり、拾得物の色情報の入力に「赤」と入れていたので「これ、赤ケースに入ってますが本体は白ですよ」
とか言って訂正したりしているうちに、この感覚・・・何かに似ている・・・。と思った。

ずばり、超アナログな母に携帯電話などの使い方を教えているときの気持ちだった。

遅々として進まぬ拾得物の受付作業にナゼか腹が立たず、さらに、iPhoneに困惑する
ふたりのオバサマになにかと助言のお節介をしてしまったのは、機械に疎いオバサマたちに
なにやら母親に似た親近感を覚え、あまつさえ「なんだかカワイイ・・・」と思ってしまったが故である。

OBとはいえ、警察官に親近感を覚え、ましてやカワイイなどと思ったことは初めてだった。
貴重な体験である。そして「拾得物を扱う者として、大変良い勉強になりました!」と
お礼を言われてしまった。警察官にお礼を言われる・・・これまた大変貴重な経験だ。

ようやく処理が終わり、最後に「拾得者の権利として、6ヶ月後に拾得物の所有権を主張すること
ができます。また、落とし主が現われた場合、その方にあなたの連絡先を教えてお礼を・・・・云々」
などと教えてもらったが、「落とし主が見つかれば、それでイイです」と、サワヤカに(自分ではそのつもり)笑顔を
残して交番を後にした。実は「何かもらえたりするのかな・・・」と一瞬ヨコシマな気持ちが頭をよぎったが、
可愛い一生懸命なアナログオバサマふたりにカッコイイとこを見せたくて、そんな風にキメてみた。

私のiPhoneには、紛失防止のためにベルトと繋ぐ、懐かしき受話器のコードの様な
ストラップが付いている。よく周りからそれを「ダサい」と言われる、今日この頃である。

model yumi
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by hideet-seesaw | 2011-05-13 22:33 | photograph


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