chocolate
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BGM♪ Across the Universe / Rufus Wainwright 


隣のお宅の女の子が、私がガレージ兼簡易スタジオとして借りている倉庫の窓を、犬とボール遊びをして
いて割ってしまった。

幸い破片が飛び散らかっただけで大したことはなく、その子にも怪我はなかった。

その子のお母さんが「この子に掃除させますから!」と言ってくれたのだが、ガラスの破片は子供には危ないし、
なにより私のガレージには、私がバイクをイジったりしたときに放置したネジやゴミやなにかの部品や虫の屍骸やら・・・
が散乱しており、割れた破片と混ざってしまっていた。そうなると、ガラスの破片掃除というより、
それらの大掃除になってしまうので申し訳ないし、愛犬のヨークシャーテリアを胸に抱き、
ションボリとうなだれて反省してるその子がなんだか可哀相だったので、丁重にお断りして私が自分で掃除するから
大丈夫だと言ったのだが、そんなやりとりを横でなにげなく見ていたいつもお世話になっている大家さんが

「悪いことをしたらちゃんと自分で始末をやらせなきゃ。高水さん、子供の躾ってそういうもんだよ。」

と諭してくださった。確かにそうだ。
可哀相だが、お言葉に甘えてその子に後片づけをしてもらうことになった。
その女の子は、背丈に合わない慣れぬ箒と塵取を懸命に使い、30分程かけて見事綺麗にしてくれた。
そう・・・ガラスの破片が散らばる前の状態よりも遥かに綺麗に・・・。

かく言う私も子供の頃、数え切れないほどのガラスを割った。故意にも過失にも。
ジャイアンの打ったホームランが空き地脇の家の窓を割り、「こらぁー!悪ガキどもめ!」の怒号に
スネ夫とジャイアンは一目散に逃げ去り、逃げ遅れたのび太は箒を持って現れた怒りの
カミナリハゲオヤジの小言をくらう。そんな光景、私の幼き頃はよく見かけた。というか、私がその当事者であった。

なかでも忘れられない思い出が、小学一年の頃。飲食店を経営する実家の駐車場に停めてあった客の車のフロントガラスを、
自慢の手製パチンコで弾いた石が、大きく弾道を逸らせて粉々に割ってしまったのだ。あくまで過失だったが、
もちろん父にこっ酷く怒られ、持ち主の客に平謝りに謝り、その車の持ち主家族にはその日タクシーで帰ってもらったのだが、
その客の家というのが横浜で、後日ガラスを直した客の車を父が私を乗せて運転し、横浜のお宅まで届けたのだった。
当時の私には、あきる野~横浜間が涯もなく遠い場所に思えて、流れる車窓の風景を見ながら、父と客に対して、
申し訳ない気持ちを募らせたものだった。

その時、そのお宅の玄関先で父と並んで「ごめんなさい」と謝ると、奥様が私に「わざわざ謝りに来てくれてありがとうね」
と、チョコレートを持たせてくれたのだった。思えばガラスを割ったときも、割られたご家族は私のことをちっとも怒らないどころか、
怒る父からかばってくれたような記憶があった。優しいご家族だったのだな・・・と、今更ながらしみじみと思う。

そして横浜からの電車での帰途。父が、立川駅内の「立ち食いそば」を食べさせてくれた。
生まれて初めて食べた立ち食いの月見ソバは、今でも忘れられないくらい美味しかった。

そんな思い出が蘇り、一生懸命に我が散らかり放題のガレージを片付けてくれたその子になにかしてやりたくなり、
急いで近所のスーパーで菓子を幾つか買って来て、ガレージ前の私道で犬と遊ぶその子に「あのさ。ガラス割っちゃったのは
しょうがないけど、掃除してくれたおかげで前よりもものすごく綺麗になって助かっちゃった。だから、コレお礼だよ。」
と菓子をあげると、満面の笑みで「ありがとうございます!」と嬉しそうに受け取ってくれた。

人の親になったことのない私は、「悪いことをして後始末をしたお礼」のその菓子が、はたして正しいのか正しくないのか
よくわからなかったが、チョコレートをくれた横浜の優しい家族の真似をしてみたかっただけなのだ。

開け放した五月の窓から、子供達の遊ぶ声が聞えてくる。なんとも心地の良いものである。
自分の為にも買ってきた「たけのこの里」をばりぼり食べながら、耳を傾けている。

model meisa
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by hideet-seesaw | 2011-05-01 22:19 | photograph


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